かって、「横浜写真」として日下部金兵衛らにより有名となった彩色写真は、文明開化の時期に日本の風景や風俗が焼付けられた鶏卵紙の写真に日本画の顔料で彩色されたもの。現代の「手彩色写真」は、これらと異なり、デジタルカメラによる高解像度での撮影原画を元とするので、通常であれば人の眼には及ばない木目の細かいレベルまで表現された下絵に彩色されて作品として仕上げられている。まさに一枚一枚がオリジナルの「一点モノ」となる芸術作品(ファインアート)であり、「写真」ではなく「写真画」という表現が適切な、写真芸術の新たな領域の作品です。
評価サマリ
総合評価 |
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個展の記録 |
各個展の日程からIsland Galleryさんのサイトへリンクして、詳細をご覧いただけます。 |
第一回個展
『マナ紡ぎ』 2015年9月4日(金)~2015年13日(日)
筆者のお勧めは、『Lokahi 融合』。パートナーや周りの人々との融合の始まり。そして、写真と絵画の融合の始まり。
初の個展として、手彩色木版画家 名嘉睦稔 さんのお言葉 も印象的です。
第二回個展
『みるやかなやの花』 2016年6月3日(金)~6月12日(日)
写真により獲得した緻密な画像情報をベースに持つため、それを作品の礎とし、主に背景(黒子)の役割を担わせている。そこに、丁寧に彩色された花々や木々が柔らかに浮かび上がる。そんな「手法」が確立されたように感じる個展でした。「安斉流」の始まりでしょうか。
第三回個展
『花鳥風月』 2017年1月20日(金)~1月29日(日)
筆者のお勧めは、『錦秋』。もはや写真の領域も絵画の領域も超越した作品なのでは。この個展で、ある地点に到達されたかと思います。そして、事務所に飾り門外不出あつかいの「紅の華」は、日々の生活で重要な癒しの要素です。
第四回個展
『さくら』 2017年6月3日(土)~6月11日(日)
絵画、日本画で様々な形態で扱われる題材。そこに真っ向勝負を挑んだ、と観る側として思った個展。けれども、「手彩色写真」にしかできない、緻密さと曖昧さのハイブリッドが、「近くで観ても遠くで観ても」楽しめる作品になったのでしょう。個々の桜の花びらが丁寧に彩色され、花の川を思わせる『祝桜』。その手前に焦点の当たった桜の樹の枝は、写真の緻密さを引き継いでいる。まさに、ハイブリッドの象徴です。
第五回個展
『百花繚乱』 2018年2月23日(金)~3月4日(日)
諸所に咲きほこる、花、花、華。これは、元が写真なのか、と思わせる作品たち。「ファインアート」とすれば、写真か絵画かは関係ないのです。創りあげられた「モノ」が提供する感動が全てです。テーマとなった花たちは、高貴でもあり、優しくもあり、艶やかでもあり、観る人の気分が反映する鏡のようです。そんな中でのお気に入りは、「花音」。静謐さの中に、ガラスを弾く1つの音だけが響いてきそう。そして、「祝花」。これから自らを切り開いて進んでいこうとされる方々への応援の一枚に最適な作品です。